2005年1月15日土曜日

花田錯 (The Bride Napping)

〔えいが〕



1962年、香港(邵氏)。厳俊監督。樂蒂、丁寧、張仲文主演。

胡金銓(キン・フー)が脚本を、柿田勇が撮影を担当した、黄梅調映画
北宋の時代。互いに一目惚れした劉月英(丁寧)と卞済(喬荘)が、すったもんだの末晴れて結ばれるまでを描いたコメディーで、同名の京劇(そのルーツは『水滸伝』)を典拠としています。
ちなみに、許冠傑(サミュエル・ホイ)と張國榮(レスリー・チャン)の旧正月映画『恋はマジック(花田囍事)』も、京劇『花田錯』を元にした作品です。

本作の見どころは、月英に横恋慕した小覇王こと周通(朱牧)が、月英をさらいに屋敷へ押しかけると、月英の下女・春蘭(樂蒂)が機転を利かせて卞済に女装をさせ、卞済が身替りになって連行されるという「女装」と、さらわれてきた月英実は卞済に同情した周通の妹・玉楼(張仲文)が彼のために一肌脱ぎ、卞済に化けて皆を騙すという「男装」にあります。
つまりは中国版「とりかへばや」的な趣向で、ストーリー的には大変愉快ながら、はっきり言って喬荘も張仲文もすぐにばれそうな見た目で、あまり嵌まっているとは言えません。
それでも劇中ではみんな気が付かないので、却ってそのことで笑ってしまいました。

それから、典雅な美女である樂蒂が、本作ではお茶目でおきゃんな下女を演じていたのが、個人的には楽しかったです。
樂蒂はこの後の『萬花迎春』でもおきゃんなキャラでしたが、それよりもこちらの方がよかったように思います。

なお、原作の京劇では主人公2人のロマンスの他、春蘭と玉楼も卞済の夫人になるという「みんなまとめて面倒見たよ」状態になるらしいのですが、さすがにそれはちとまずいと感じたのか、ここでは一夫一婦制できれいにまとめてありました。

女装と男装にやや無理があること、ややテンポがゆるく、立ち回りの動きも鈍いこと等、難点もありますが、時代劇ミュージカルとして安心して観られる作品といえましょう。

柿田勇のカメラも、シネスコ画面ならではのものがあり、一度大きな画面で観てみたいものだと思いました。


丁寧(ティン・ニン)。劉月英役。私生活では、邵氏の御曹司と結婚した玉の輿女優です。

張仲文(チャン・チョンウェン)。セクシー女優の草分け的存在。エヴァ・ガードナー系の女優さんだと思います。本作では、男勝りな美女を演じていました。

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