2005年5月15日日曜日

海外へ進出する邦画

〔ちょっとお耳に〕

今日も軽めのネタで失敬。

タイトルは、1961年4月14日付『報知新聞』の記事から。
この頃すでに下り坂に入っていた映画界が、その現状を打破するべく海外輸出に活路を見出し始めた、というのがその内容ですが、なかなか面白いのでデータのみちょこっとご紹介しておきます。

この記事によると、1960年の邦画の輸出額は、約11億8788万6千円。
内訳は、東宝が3億3828万6千円、東映が2億5560万円、大映が2億1600万円、松竹が1億8000万円、日活が1億2600万円、新東宝が7200万円となっています。
ちなみに、2004年の邦画の海外への配給権、上映権、キャラクター権の販売輸出額が約63億400万円。
映画入場料が200円、大卒初任給が約1万3000円の時代の11億円と、映画入場料が1800円、大卒初任給が約20万円の時代の63億円とでは、その重みも自ずから違ってこようというものです。
もひとつついでに言うと、1960年の邦画興行収入第1位は、『天下を取る』の3億2392万円。
つまり、東宝の輸出額と国内ナンバー1ヒット作の興収とが、ほぼ同じ金額ということになります。

それでは、各社の輸出状況をもう少し詳しく見ていくことにいたしましょう。

(東宝)
ロサンゼルス、南米、沖縄に封切館、香港、ハワイに選択館を所有。
『無法松の一生』の興収が7200万円。
『美女と液体人間』や『宇宙大戦争』等の特撮物は、コロンビアに9000万円から1億800万円で世界配給権を譲渡。

(東映)
動画の人気が高く、『少年猿飛佐助』はMGMが3600万円で買取。
時代劇は、ハワイや沖縄で人気がある。

(大映)
アフリカを除く全世界に配給を広げる。
『鍵』の配給権をワーナーに5年契約の歩合制で売り、好成績をあげる。

(松竹)
『黄色いからす』『二十四の瞳』をソ連、中国に輸出して、それぞれ1800万円ずつ利益をあげるも、近年はやや低調。

(日活)
ロサンゼルスの東洋劇場で年間約50本上映する他、タイに35本、ブラジルに48本輸出し、香港のショウ・ブラザーズとは24本の契約を結んでいる。
また、1961年にはアメリカの配給会社「カンジ・ピクチャー」と年間12本の輸出契約を結ぶ。
主として東南アジアで強みを発揮し、石原裕次郎、小林旭のアクション物に人気がある。

(新東宝)
東南アジアからあがる収益が海外市場から得た収入の9割を占める。
香港、台湾、シンガポール等に1本360万円ほどで輸出。

以上、ざっと各社の状況を列挙してみましたが、ショウ・ブラザーズが日活映画の配給で儲けていたことや、東南アジアでの日活や新東宝作品の人気がこれらのデータからも伺えて、なかなか興味ぶかいものがありました。
最後に、1960年の邦画各社の総売上をご紹介して、本日のネタをおしまいにしたいと思います。

第1位 東映  97億9300円
第2位 日活  62億3800万円
第3位 東宝  47億8900万円
第4位 大映  45億9500万円
第5位 松竹  43億2700万円
第6位 新東宝 13億2400万円

おつかれさまでした。

付記:こちらにちょこっと香港に於ける日本映画に関する記述があります。

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