2005年5月24日火曜日

愛的教育 (Education of Love)

〔えいが〕



1961年、香港(電懋)。鍾啓文監督。林翠、雷震、王引、王萊主演。

林翠版「教師びんびん物語」(うそ)。
1997年に出た『香港電影満漢全席』(『キネマ旬報』臨時増刊、1997年3月14日号)所収の「香港映画史 1896~1860年代」(余慕雲。水野衛子訳)で、1960年代の北京語映画の名作として取り上げられている『愛の教育』(105頁)とは、この作品のことです。
電懋の総経理でプロデューサーだった鍾啓文がメガホンをとっていますが、これは自発的に監督業に乗り出したものではなく、当時、岳楓や陶秦といった看板監督の一部が邵氏に移籍して人手不足に陥ったため、やむを得ず監督も兼任したというのが真相のようです(藄湘棠「我在電懋工作的回顧」〔『國泰故事』所収。2003年、香港電影資料館〕による)。
おおまかなストーリーは、下記の通り。

林静儀(林翠)は、小学校の教師である父・學賢(王引)が病に倒れたため、代用教員として父の教え子たちを受け持つことになります。
腕白盛りの男子のみというクラスで手荒い洗礼を受けた静儀は、こんなどうしようもない悪ガキたちへの教育に情熱を燃やす父に対して疑問を抱きます。
學賢は教育熱心のあまり家庭を顧みず、それに不満を抱いた静儀の母・婉霞(王萊)は彼の許を去り、別の男性と再婚していたのでした。
しかし、その夜、クラスの子供たちが非礼を詫びにやってきたことで静儀の気持ちもほぐれ、翌日から再び学校へ通い始めます。
その後、クラスには貧困や家庭内暴力等、様々な困難を抱えている子供たちがいることを知った静儀は、父の助けを借りながら問題解決のために奔走、その中で次第に教師としての使命に目覚めていくのでした。
同じ頃、静儀の恋人で医学生の章世杰(雷震)のすすめで精密検査を受けた學賢は、自分が肺がんで余命いくばくもないことを知ります。
教員採用試験に合格した静儀は正式な教師として働き始めますが、世杰は医学の勉強のため留学する自分についてきて欲しいとプロポーズします。
このまま教師を続けるのか、それとも世杰と結婚して海外に行くのか、人生の岐路に立たされた静儀の決断やいかに・・・・。

溌剌系キャラの林翠が、ここでも曲がったことが大嫌いな熱血女教師を好演していました。
いい先生だけど、でも、ちょっと怖いかな。
スパルタ先生。

子役陣も、それぞれがそれぞれのキャラクターを生かした達者な演技を見せ、この作品の魅力の半分は彼ら子役たちのものと言ってよいと思います。

それから、「歌う王引」にはびっくり。
なかなかいい声でした。

ところで、「父の志を継ぐ娘」というモチーフは、この翌年に電懋が東宝と合作した映画『香港の星』(千葉泰樹監督。尤敏、宝田明、団令子主演)でも登場しますが、両者の間にはかなりの相違が見られます。

本作においては、父の職業に対して否定的な見解を持っていた娘が、たまたま代用教員として働くことになったことによって職業的使命感に目覚め、父の偉大さを思い知るのに対し、『香港の星』では父(王椿伯〔王引〕)の意思(自分の跡を継いで難民への医療活動に従事してほしい)に従順な娘(王星璉〔尤敏〕)は、不満を洩らすこともなく医師への道を進みますが、しかし、彼女に医師としての使命感が芽生えることはついにありませんでした。
また、本作に登場する恋人は彼女の職業に理解と共感を示し、最後には教師を続けたいという彼女の意思を尊重して一人留学先に旅立ちますが(仕事も恋愛も続行)、『香港の星』ではお相手である長谷川(宝田明)が医師としての星璉に敬意を払うことはなく、ただ自分についてきて欲しいと求めるのみでした(仕事か恋愛かの二者択一)。
これはやはり「結婚したら女性は仕事を辞めて家庭に入るもの」という日本的な不文律が影響しているのかなあとも思いますが、女性が職業を持つことに対する日港の考え方の違いが感じられて、なかなか興味深いものがありました。



いつも泣いてる朱元龍少年。後の洪金寶です。



林翠お姉さんにしっかと抱きついて号泣!という役得(?)な場面もありました。



こちら、電懋の名子役である鄧小宇。彼が大人になってから創刊したのが、この雑誌。やはり只者ではありません(こちらに近影あり)。

3 件のコメント:

weirdtramp さんのコメント...

I don't understand japanese, so it is pity that I can't understand your posts. But I like your blog! Cool!

匿名 さんのコメント...

せんきちさん、こちらでは初めまして!
黄耀明が「愛的教育」(アルバム『光天化日』収録)っていう歌を歌っていたんですが、この映画が元ネタだったんですね。達明一派や黄耀明は映画のタイトルをそのまま曲のタイトルにするというパターンが多いですが。

せんきち さんのコメント...

To weirdtramp

Hello!
Thank you for your comment.
I like HongKong movie,especially old movies.
I like Ms.Lucilla Yu Ming very much.

from Sen

>taroさん

コメントありがとうございます。

>黄耀明が「愛的教育」(アルバム『光天化
>日』収録)っていう歌を歌っていた
そうだったんですか。
彼って、「忘不了的你」みたいな国語時代曲のカバーも出していましたよね。
なるほど。