2006年7月9日日曜日

陳沖のぶっとび母さん

〔しようもない日常〕



来週、年に1度のノルマで、舞台で三味線と箏を弾かなきゃならんので、既にテンぱっております。
昨日も朝から地獄の特訓があったんですが、それが終わった後、第15回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に参戦、オープニング作品『素顔の私を見つめて・・・(Saving Face)』(アリス・ウー〔伍思薇〕監督)を観てまいりました。

この作品、昨年の台湾金馬奨で主演のミシェル・クルジーク(楊雅慧)が主演女優賞にノミネートされまして(1票差で惜しくも受賞は逃したものの、映画は「観客が選んだ最優秀作品賞〔観衆票選最佳影片奨〕」を受賞)、そのときから気になっていた映画でありました(中文タイトルは『面子』〔台湾〕『愛.面子』〔香港〕)。
で、日本で公開されないかなあと思っていたところ、今年の3月に日本版DVDが発売、そして今回の上映となった次第。
ただ、案の定DVD上映で、しかも字幕の設定を間違えて英語字幕が流れるというトホホな手違い(すぐに日本語になりましたけど)もありましたが、せんきちとしては観られて御の字でおました。

詳しい内容は公式サイトをご参照頂くとして、アメリカの華人をテーマにした作品でヒロイン(ウィル〔小薇〕)が同性愛者という設定は『ウェディング・バンケット(囍宴)』を連想させますし、ヒロインの母親がまき起こすあっと驚く恋愛騒動は『恋人たちの食卓(飲食男女)』、チャイナタウンにいられなくなった母親がヒロインの家に転がり込んで奇妙な同居生活が始まるという件は何となく『プッシング・ハンズ(推手)』を思い起こさせたりと、なんだか「李安の父親三部作いいとこどり」映画と勘違いされそうですが、いえいえ、これはこれでなかなか上質の作品に仕上がっておりました(そういや、主人公が医者というのは、『袋鼠男人』を思い出すね。どっちも妊娠ネタありだし)。

何より、陳沖演じるおっかさんのぶっとびぶりが秀逸。
何かというと「抗戦の頃は」と言い出すお祖母ちゃんにも笑ったけど。

このおっかさんは、彼女にとって最大の権威であり障壁だった父親、つまりヒロインの外祖父の決めた相手と結婚させられて、チャイナタウンを一歩も出ることなく、中国の伝統的な価値観しか知らない(もちろん英語もろくに出来ない)女性になっちゃったんですけど、彼女の年代(40代後半から50代前半)でもこういう華人ってまだけっこういるのでしょうかねえ。

もちろん、ヒロインの恋の行方も見逃せません。
ヒロインは恋人となるヴィヴィアンと子供の頃すでに出会っていて、そのときのことをヴィヴィアンはずっと忘れずに覚えていたのですが、ヒロインがそのおりに何を着ていたかというと、

クリスティ・マクニコルのTシャツ

だって。
懐かしすぎ。

というわけで、観終わって直ぐにもう一遍観たいなあと思ったせんきちは、帰りがけに受付で売っていたDVDを買ってきてしまいました。

そして。

帰宅してから特典映像なんぞを観た後、日本語吹替版のキャストを何気なく見たところ、なんとせんきちの学生時代の先輩が陳沖の吹替をやっているじゃあーりませんか。
こっちも気になるわ。

付記:ミシェル・クルジークは台湾生まれ。5歳のとき父方のおばに引き取られてアメリカに移住。クルジーク(Krusiec)はおばさんのご主人の姓だそうな(追記:台湾生まれというデータは、台湾の報道による。IMDbのデータではアメリカ生まれになっており、ご本人が「アメリカ生まれ」と答えているインタビューもありましたが、実の両親やきょうだいはずっと台湾在住なので、おそらくは台湾生まれという方が正確だと思われます。ちなみに、ヴィヴィアンを演じたリン・チェン〔陳凌〕はニューヨーク生まれ。両親が台湾出身)。
本作はサンダンス映画祭に出品されましたが、台湾じゃこの映画祭のことを「美國日舞影展」っていうみたいね。「にちぶ」だぜ、「にちぶ」。
ちなみに、台北での興行成績は2005年11月25日から12月31日までの36日間、3軒の映画館(キャパ不明)で上映されて、1,331,400元の興収をあげました(年間145位)。

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