2009年11月2日月曜日

札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥

〔えいが〕

つい最近まで、五反田の池上線高架下に「松竹」という名前の
お風呂がありますたが、小津の『東京暮色』であの界隈が
出てきたことからのネーミングだったのでせうか(おいおい)。

1975年、東映京都。関本郁夫監督。芹明香、東龍明主演(ナレーション・山城新伍)。

というわけで、個人的なメモ。
3日間の上映期間の内、監督のトークショーがあった後半2日間は仕事の都合で足を運べなかったため、あくまで作品内容のみに関する備忘録です。

1969年の『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』(以前書いたヘタレな感想はこちら)に始まる、いわゆる「東映セックス・ドキュメント」シリーズの1本として企画された作品ですが、実際の映画は20歳の泡姫・ひろみ(青森県出身。芹明香)とそのヒモ・利夫(和歌山県出身、27歳。南の男が北の女に寄生するという構図ね。東龍明)が、各地のお風呂で働きつつ日本列島を放浪する姿をセミドキュメンタリータッチで描いています。
したがって、『キネマ旬報』にあるような(『東映ピンキーバイオレンス浪漫アルバム』もこの記述を踏襲)、


尼僧スタイルの風俗嬢が恭しく客を迎える「尼僧ソープ」。ロビーいっぱいにジェット機の爆音が響き、中からスチュワーデス姿の風俗嬢が出てくる「スチュワーデス・ソープ」。詰襟の学生服の男子従業員、おさげ髪の風俗嬢の「女学校ソープ」。小児科、肛門科、性器吸入科等の看板を下げ、風俗嬢は看護婦スタイルの「病院ソープ」。


なんていう紹介映像は、1つも出てきません。
ホテトルのはしりみたいな「出張トルコ」と女性専用トルコ(トルコ伯爵。ビキニブリーフ穿いた泡王子が2人がかりで女性にご奉仕)が申し訳程度に出てきますが、これは「セックスドキュメント」としてのアリバイ作りの色彩が濃厚です(他にも、横浜から博多に流れてきたハーフの泡姫への取材あり)。
それよりは、ひろみの出身地が青森・下北半島である点等、後の『処女監禁』や『天使の欲望』(ヒロインの出身地が同じ)の原点にあたる作品と考える方が妥当でしょう。

冒頭、札幌のビジネス旅館の窓から放尿していた芹さんが、ラストでは列車最後部のデッキからまたしても盛大に放尿、「芹さんの放尿に始まって放尿に終わる映画」でおました。
途中の「自動車車内からビール噴射」も、放尿の暗示でせうか。
一度は喧嘩別れ(というか、雄琴で壮絶な暴力沙汰を起こした後、芹さんはパンティ一丁のままタクシーに乗って逃走。北へ舞い戻った芹さんは、「ハワイ」という名のお風呂に就職。北国のトルコがハワイ…)した利夫とヨリを戻した後、立ち寄った食堂でさっそく利夫の股間に手を伸ばすひろみが、いかにも好き者なんですけど憎めません。
喧嘩別れの原因となったポニーちゃんのエピソードには、しんみりさせられましたです。

中盤、何の前触れもなく菅原通済や榎美沙子(懐かしいね。生きてるんだろか)といった当時の出たがり識者(?)が大挙登場、トルコに関する見解を披瀝しているのには大爆笑。
若き日の黒鉄ヒロシが、したり顔でトルコ擁護論をぶっていました。

ところで、これは内容とはかんけーないのですけれど、近年では上海でもブイブイいわせているお風呂(こちらこちらをご参照下さい)、この映画にも「香港」や「蘇州城」といった中華系の店名を冠したお風呂の看板が出てきまして、なるほど、中華とお風呂って昔からけっこう相性がよかったのだなあと、改めて認識した次第です。

ちなみに、11月21日(土)からシネマヴェーラ渋谷で開催される山城新伍特集でも上映されるらしいです。
今回見逃した皆様は、ぜひその機会にご覧になってみて下さい。

こちら、戦前の上海で発行されていた英字紙に
掲載された正統派お風呂の広告。オーナーが日本女性と
いうのが気になりますです。


あ、そうそう、陰毛のお手入れ映像、大変勉強になりました。
もちろん、自分は実行できないと思うけど…。

おまけ:識者の1人として登場するトルコ・コンサルタントの垣沼健司氏、せんきちの中学時代の愛読書である『陰学探検』にインタビューが掲載されていました。

『陰学探検』は、現在、ちくま文庫から2分割&
タイトル変更されて好評発売中(垣沼氏のそれは『色の道~』の方に収録)。
小沢昭一氏の著書だと、『小沢大写真館』(これもせんきちの中学時代の
愛読書)にも泡姫へのアンケート調査があります。

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