2010年3月5日金曜日

高慢と偏見とゾンビ (Pride and Prejudice and Zombies)

〔ほん〕〔ちょっとお耳に〕

「おばさま、わたしは戦士なのよ。少林三十六房を突破して、
カンシェンタンの免許皆伝書をたまわったのよ」

2009年。ジェーン・オースティン(Jane Austen)、セス・グレアム=スミス(Seth Grahame-Smith)著。

どうも。
トド@今日は誕生日です。

さっそく本題。

ジェーン・オースティンの『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』にゾンビをぶちこんだマッシュアップ小説(って言うらしい。知らんかった)。
よくわからない方のために一応、尼尊の解説をコピペ。

18世紀末イギリス。謎の疫病が蔓延し、死者は生ける屍となって人々を襲っていた。田舎町ロングボーンに暮らすベネット家の五人姉妹は少林拳の手ほどきを受け、りっぱな戦士となるべく日々修行に余念がない。
そんなある日、近所に資産家のビングリーが越してきて、その友人ダーシーが訪問してくる。
姉妹きっての優秀な戦士である次女エリザベスは、ダーシーの高慢な態度にはじめ憤慨していたものの……。
ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』をベースに、ゾンビという要素を混ぜ合わせることで、まったく新しい作品に生まれ変わった、全米で誰も予想だにしない100万部の売上げを記録した大ヒット作、ついに日本上陸 !


まあ、ようするにIFDやフィルマークのニコイチ映画(サンプルはこちら)の小説版みたいなもんだろうと思って読み始めたのですが、ニコイチの方が元の映画の筋は全く無視して無理やりゾンビやニンジャ映画に仕立てているのに比べ、こちらはあくまでも『高慢と偏見』の筋を生かしつつそこにゾンビと功夫とニンジャ風味を加えているので、けっこう楽しめる読み物に仕上がっておりました。

で。

原典の『高慢と偏見』と同じく、こちらでもヒロインのエリザベス・ベネット (Elizabeth Bennet.リジー〔Lizzy〕)とミスター・ダーシー(Fitzwilliam Darcy)が、誤解と衝突を経てやがて恋に落ちていくのですけれど、原典では2人の間に立ちはだかる障害として家柄の違いとリジーの家族の問題があったのに対し、こちらではさらにリジーが戦士としての訓練を受けた土地が少林寺(中国)だったから、という新しい(のか?)要素が加わっています。
日本嫌いで娘たちを連れて少林寺で修行をしたベネット氏(Mr. Bennet)とは対照的に、ミスター・ダーシーの一族は日本のキョート(京都)の一流の道場で修行をすることに最高の価値を見出しており、特にダーシーの叔母のレディ・キャサリン (Lady Catherine.屋敷ではニンジャを何人も抱えており、道場の壁には「合気道」と「諸行無常」の掛け軸が!)はあからさまに中国を軽蔑、少林寺で修行をしたというリジーを、

「中国ですって。あの坊主どもは、いまだにあのつたないカンフーのわざを英国人に売りつけているのね」

と馬鹿にします。
そんなこんなの行き違いがあって、最後にレディ・キャサリンとリジーの死闘(!)が繰り広げられるのですが、ここはなかなか読み応えがありました。
ただ、せっかく少林寺や京都(のどこだよ!)で修行をしたのに、ゾンビ退治には安易に銃を用いてしまう大英帝国の皆様の軟弱ぶりには少々がっかりいたしました。

もっと拳を使え、拳を!

ちなみに、この小説、ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)が映画化権を取得したらしいです。
映画版ではぜひ、拳の魅力を前面に押し出して欲しいものです、はい。

付記:小説の中で特に笑った箇所。
・ウィカム(Mr. Wickham)からダーシーの悪口を聞かされたリジーが言う台詞。
「なんてひどいかたでしょう!座頭市の仕込杖で叩っ斬られればいいんだわ!」
・ダーシー家の屋敷はキョートの特に豪壮な城を模して造られた建物で、邸内ではナレズシ(なれ寿司)が珍味として供される(たしかに珍味だけどさあ…)。

「お忘れにならないで。わたしは少林派の弟子
なんですよ。七星拳の達人なんです」




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