2013年3月2日土曜日

『怪談おとし穴』と『裸屍痕』

〔えいが〕



貧乏くさい渚まゆみとはまた違った意味で
(脂が乗り過ぎて売れ残った大年増)
鬱陶しい丁紅。メイクも濃すぎだよ。

どうも。
トド@元旦の記事からいつの間にやら2ヶ月が経過してしまいますたです。
ちょっと本業に追われておりまして(お金になるといいんだけどねー、そうでもないのよ)、こちらの方は相変わらずの放置プレイですが、このたび、念願かなって島耕二(史馬山)監督が邵氏で撮った『裸屍痕』を観ることができましたので、この作品とオリジナルである『怪談おとし穴』(1968年、大映東京。島耕二監督。成田三樹夫、渚まゆみ、三条魔子、船越英二、他)との比較を試みてみたいと思います。

さて、前々からこちらでも触れている通り、『裸屍痕』は島監督が大映で撮った『怪談おとし穴』のリメイク作品でありますが、主要キャストの対照は次の通りです。

成田三樹夫 → 陳厚
渚まゆみ → 丁紅
三条魔子 → 丁佩
船越英二 → 丁紅(船越は渚の兄役でしたが、『裸屍痕』では丁紅が2役で妹役も演じています)

また、ストーリーのおおまかな流れはオリジナルとリメイク版、ほぼ同じと言ってよいのですが、その過程及び結末において3つの大きな違いが見られます。
それは、

1、『怪談おとし穴』では渚まゆみの遺体を会社のビルのパイプシャフトに落下させて隠蔽するのに対し、『裸屍痕』では廃屋の壁の中にセメントで塗りこめて隠すという、ポーの『黒猫』や日本の「化け猫」もののような趣向を用いています。このとき陳厚が遺体を運んできた車を盗まれてしまったことが、事件の解決に大きな役割を果たすことになります。

2、『怪談おとし穴』では妹の失踪に不審な点があると睨んだ兄が主人公(成田三樹夫)を追い詰めるのに対し、『裸屍痕』では丁紅の家族の依頼を受けた弁護士(王俠。主人公とは大学の同窓生という設定のようでした)と妹(丁紅の2役。姉の亡霊に扮して主人公を恐怖に陥れます)が主人公(陳厚)を追い詰めます。

3、『怪談おとし穴』のラストでは渚まゆみを落としたパイプシャフトに主人公も落ちていく、という設定でしたが、『裸屍痕』では罪を暴かれて半狂乱に陥った主人公が弁護士から逃げる途中、誤って崖から転落して死亡するというラストに変わっています。

というもので、せんきち的にはこの他にも『裸屍痕』には渥美マリみたいな受付嬢がいない、という点も大きな違いだったりするのですが、まあ、それはふつーの方には関係のないことですね、はい。

上記3点の違い、ささいなようにも感じられますが、これらの違いによって『裸屍痕』は『怪談おとし穴』のような「現代都市におけるオフィスビルを舞台にした怪談」ではなく、「貧しかった青年の野望とつかの間の栄光、そして挫折の記録」という、なんだか香港版『陽のあたる場所』(注)のような作品に仕上がっていました。
当初、リメイク版のキャスティングはどうなのかな?と危惧したせんきちですが、陳厚の純朴そうに見えて実は狡猾な主人公の造型や、渚まゆみに勝るとも劣らないほどの鬱陶しいオーラを発散する丁紅、お転婆お嬢様の丁佩と、意外や意外、なかなかしっくりきており、映画の内容もこれはこれでそれなりに良く出来ているのではないか、と思いました。
ちなみに、『裸屍痕』に関しては早稲田大学演劇博物館に日本語版シナリオがありますが、実際の作品もこのシナリオと同様の内容で、この日本語版シナリオが決定稿であることがわかりました。

以上、簡単ですが、『怪談おとし穴』と『裸屍痕』の比較をまとめてみました。
また何か新しく気づいた点があれば、その都度アップしていく予定です。

注:『陽のあたる場所(A Place in the Sun) 』そのものも香港で『人約黃昏後』(1958年、邵氏。何夢華監督。尤敏、趙雷、他)のような翻案作品が作られています。




陳厚&丁佩、2人のハネムーン先は日本。
陳厚は樂蒂とのハネムーン先にも日本を
選んでいたね、そういえば。

(ひとまづおしまい)

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