2015年5月4日月曜日

龍山寺之戀

〔えいが〕


井上梅次監督のご著書では、
龍松(凌雲)の北京語は
かなりトンデモであったように
書かれていますが、実際に聞いてみると
それほど気になりませんです。

1962年、台湾(莊氏影業公司)。白克監督。莊雪芳、龍松(凌雲)、唐菁、他。

どうも。
トド@仕事しなきゃいけないのに現実逃避中です。

さて。

現在、シネマート六本木で開催中の特集「台湾シネマ・コレクション」にて、昨年の大阪アジアン映画祭で好評を博した『おばあちゃんの夢中恋人(阿嬤的夢中情人)』が劇場初上映されたことを記念して、 台湾語映画全盛時代の作品についてちょいと取り上げておきます。

本作は、香港の廈門語映画で名を馳せた莊雪芳を主役にすえた歌謡映画で、1964年に白色恐怖(白色テロ)の犠牲となった白克監督の遺作でもあります。
香港で製作されていた廈門語映画と台湾語映画との関係に関しては、廈門語映画に刺激されて台湾語映画の製作が始まったという経緯もあり、両者の交流も当時非常に盛んに行われていました。
『梁山伯與祝英台』で梁兄を演じた凌波が台湾で爆発的な人気を博したのも、おそらくは、彼女が北京語映画に出演する以前、小娟という芸名で廈門語映画に出演、台湾の本省人にも馴染み深い女優さんであったことと無関係ではないと考えられます。

主役の莊雪芳はシンガポールの華人(福建人)ですが、この映画では山東出身の外省人役ということで、全編北京語の台詞で通し、劇中で彼女が歌う曲も全て北京語です。

映画の内容は、本省人と外省人の軋轢と和解、そして恋を描いた『南北和』系の作品で(注)、莊雪芳を巡って恋の鞘当を演じる本省人の龍松(後の凌雲)と外省人の唐菁が、実は幼い頃生き別れた実の兄弟(つまり、唐菁は外省人に育てられた本省人)であったというオチが着きます。
本省人と外省人の恋を描いた作品というと、李行監督の『兩相好』も有名ですが、本省人の龍松が外省人である莊雪芳との交際を反対されたり、莊雪芳が本省人の縄張りである龍山寺で薬酒を売ったために嫌がらせを受ける等、『兩相好』よりも比較的リアルに両者の軋轢が描かれているように思います。
ただ、両者の和解を促すのが台湾語が堪能な外省人(即ち福建省からやって来た外省人。 楊渭溪)や、外省人に育てられた本省人(唐菁)であったりと、どちらかといえば「悪いのは狭量な本省人」というスタンスに立っているような気がして、その辺がやはり当時の限界なのかなあとも思いました。
『兩相好』では外省人に好意的な役どころだった戽斗が、ここでは莊雪芳をいびりまくる嫌味な役どころを演じているというのも、面白いといえば面白いのですけれど。

ともあれ、この作品、公開時には大当たりで、特にマレー半島では驚異的なロングランを記録したそうです。

楊渭溪。
『バンコックの夜(曼谷之夜)』で
張美瑤の祖父を演じていました。
彼も後に白色恐怖の犠牲になります。

龍松の部屋には葛蘭の写真が
飾ってありました。

映画に登場したカフェ。
実在したお店のようですが、
どこにあったのでしょう。
 
 
注:白克監督の1956年の作品『黃帝子孫』も本省人と外省人の恋愛を描いていました。この映画は、林沖のデビュー作でもあります。

(ということで、メモ的な内容でおしまい)
 

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